前回は、パワハラや不当な叱責を受けたあとのダメージに対処するために、まずは事実であるが故にダメージを受けているのではなく、自分の性質がそうさせているだけということを理解することが大事であると述べました。それに引き続いて、今回はダメージを負っている状態のときのアドバイスをもう一つ、書きたいと思います。
私がパワハラに悩まされていた当時の記憶として特に覚えていることは、パワハラを受けた日は、帰宅後に特に精神状態が悪化することでした。
それは、言わば毒を注射をされたようなものです。怒鳴られたりしてショックを受けた後でも、まだ現場にいるときは精神的に張り詰めていてやり過ごすことができますが、勤務が終わって緊張の糸が切れてからが大変だったのです。帰宅した後は、現場で打たれた「毒」が回ってきて、もがき苦しむことになるのです。
そのようなネガティブな感情に支配されているときの理性に対する影響力はすごいもので、どれだけ叱責が理不尽なもので、このような状態に陥るのは自分の性格によるものだと分かっていても、受け流せず本気に受け取ってしまうのです。(根が真面目な人間ほど悩みやすいと言われますが、その通りです)
こうなるともう一人相撲になり、完全に自分の中だけの戦いになります。脅迫的にその場面が繰り返し思い出され、頭から離れなくなります。この苦悩たるや、分かる人にしか分からない相当に重く、苦しいものです。(翌朝、出勤するときの憂鬱さは筆舌に尽くしがたいものでした)
このような経験は、理不尽な叱責やパワハラで苦悩している方には共感してもらえると思います。
そのような状態に陥っているときでも、一つ覚えておいてほしいことがあります。それは、たとえ今は成す術がなくとも時間が解決すると思っておくことです。
これまでの人生でも数多くショックを受け、様々な悩みを経験してきていると思います。しかし、解決していなくても悩まされなくなったことが山ほどあるはずです。なぜ、悩まされなくなったのでしょうか?
過去の幾多の悩みに今現在、囚われていないのは解決してきたからではなく、その多くは時間が経って感情が収まり、忘れたからなのです。つまり逆に言えば、今の苦悩に喘いでいる悩みというのは、まだ時間が経っていないから問題にしているだけということです。
現実にあった出来事でも、忘れてしまったことは自分にとって無かったことと同じなのです。時間が経てば問題にならなくなる悩みというのは、自分が問題としなければそれ以上のものはないという類の悩みです。一時的な感情に囚われているだけであるから時間が経つと未解決でもその問題は消え失せるのです。
脳の機能に関する本で「強いストレスを受けた後の脳はどのような反応をするのか?」という解説を読んだことがあります。それによると、脳は強いストレスを受けた後に、ショック期、反ショック期、抵抗期といった経過を辿って回復していきます。帰宅後に「毒」が回って苦しめられている状況でも、今はショックを受けた後の脳のストレス反応として一時的にそうなっているだけのことだと考えましょう。その段階を経て、ダメージから回復していくのです。今の重い状態は、まだ時間が経っていないショック期であるからそうなっていると理解しておくことが大事です。
一定の時間が経てば、忘れてしまった過去の多くの悩みのように今回のことも無かったことになります。今は非常に重大なことのようにしか思えなくても、実はその程度のことなのだと思いましょう。
とは言っても、その渦中にいるときは耐え難いものです。そこで次回は、成す術がないと思える状況でも行動を起こし、積極的な回復を試みてみようという話しを書きたいと思います。
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