心理状態はボディーランゲージに出る
ボディーランゲージという言葉を聞いたことがあると思います。ボディーランゲージは、直訳すると「身体言語」。これは、主に表情や身振りなどで相手に意思を伝えることです。他人とのコミュニケーションにおいて、ボディーランゲージが担う役割は、言葉が担う役割よりも大きいと言われます。
ボディーランゲージは普通、意識的にやるものではありません。感情や心理状態を自然に姿勢や挙動、動作、声の調子、表情などに表すのが人間です。「目は口ほどに物を言う」という言葉がありますが、それと同じように姿勢や挙動、動作といったものも言葉以上に内面を表すものです。
つまり、ボディーランゲージは本心を表してしまう重要ポイントなのです。言葉で伝えられる情報は、その中の一部でしかありません。
他人は無意識にボディーランゲージを読み取る
そして、人間は無意識にボディーランゲージを表しているのと同時に、無意識に他人のボディーランゲージから相手の心理状態を読み取っています。それを改めて意識することが重要なポイントです。
嘘発見器というものがあります。噓発見器は、取り調べや尋問を受ける者が保身のために嘘を言っても、脈拍・心拍・発汗など本人の意図しない身体の反応に出てしまうことを探知することで嘘を見抜く装置です。
それと同じように、たとえ何も喋らなくても、心理状態や心的態度はボディーランゲージによって見抜かれてしまいやすいのです。女性がよく男性の浮気を見破るのも、当人は普段通りにしているつもりでも、普段と違うボディーランゲージが出てしまうからです。それを読み取って疑念を抱き、自分にやましいことを隠しているという確信に至るのです。
暴漢や強盗は、気が弱そうで不安そうな人間をターゲットにします。襲ったらまず逃げ出すような相手を見極めます。反撃してきそうな相手、強そうな相手はまず避けます。
しかし、暴漢は道行く人に「あなたは気が弱いですか?」とわざわざ聞きまわる必要はありません。被害者になりやすい人は、ボディーランゲージで「私は気が弱いです」と教えてくれているのです。暴漢や強盗は、そのサインを読み取るだけで良いのです。
ボディーランゲージを変えるのが戦略の第一歩
ここまで説明すれば、言いたいことは分かると思います。私が職場で攻撃されやすい人とされにくい人をグループ分けして何が違うのかを観察し続けて、まず気がついたのがボディーランゲージに違いがあることなのです。
攻撃を回避するためには、仕事の成果を改善する、好感度を上げるなど、やるべきことはいくつもありますが、まず基本的にボディーランゲージを変えることが印象操作術でも基本的なことになります。(学校のイジメに関しては、これを変えるだけで相当な効果を上げられると思います。しかし、職場でのイジメは複数の要素が絡むので他にも対応すべきことが多くあります)
前述した暴漢や強盗の例でも、護身術の本で「堂々とした歩き方をしている方が被害に遭いにくい」というアドバイスを読んだことがあります。暴漢や強盗にしても、そして社内暴漢にしても、加害者は弱そうな相手をターゲットにするという基本は変わりません。そこを変えれば「態度/信用度の4つの分類」で説明したタイプ3と4から除外させることができます。
ボディーランゲージを変えるということは、これまでと動作、挙動、声の調子、表情のパターンなど、言語以外で相手に与える印象を変えることです。
ボディーランゲージを意識的に変えるなど、難しいのではないか?と思うかもしれません。相手が噓発見器であれば、脈拍や発汗などを抑えなければなりませんから確かに難しいでしょう。どんな状況であっても、自分の心理状態をコントロールできるようになるのは、至難の業です。
しかし、ここで問題にしている相手は幸いにも人間です。ボディーランゲージを意図的に変えることは、噓発見器を騙すことに比べればずっと簡単です。ボディーランゲージを変えるのに心理状態をコントロールする必要はありません。そのように演技をすれば良いのですから。
兎にも角にも、ここではまずボディーランゲージというものが如何に重要であるかを理解してください。印象操作術では主にそのボディーランゲージを意図的に変えることが重要な戦略の一部となります。